木下大サーカス

モテたい一心で媚薬香水に手を出した

香りと思い出

あれは大学生の頃だった

「ひろくん!」

いきなり後ろから声をかけられ、ギュッと抱きしめられ、言われた一言。

「ひろ大好き」

え?ひろは一体だれですか?こんなに嬉しくない大好きは初めてすぎる。

その時の私といえば、ふわふわ系可愛い女子代表のAちゃんに後ろから抱きしめられているといった状況だった。

訳を聞くと、彼氏が私と同じ香水を使っているとのことで

「ちょっとだけすりすりしてもいい?」と言われ、ただひたすらゾッとした。

私にヒロを重ねないでくれ!!

そうです、香りには記憶という思い出が宿っています。

先程、Aちゃんはヒロ君との楽しい思い出を、私に重ねたのです。

ごちゃまぜになった甘い記憶は、スクランブル交差点。

先駆者がいると、とても厄介です。

Aちゃんに会うたびに、ヒロ君との甘い記憶をなすりつけられたんじゃあ、たまったもんじゃありません。

そこで私は店頭販売されてる香水をつけたら濡れ衣着せられる!と、香水自体に若干のトラウマを抱き、香水をつけることをやめた時期がありました。

どうしたらモテるのか?

ほどなくして大学を卒業し、サーカスに入団した私は、舞台で輝く先輩方の観察を始めました。舞台映えする秘訣を知りたかったのです。

芸の数が多くいわゆるスター街道まっしぐらの先輩方をみておもったのは「自信に溢れている」ということ。

そして外人アーティストは大抵香しいパフュームを漂わせており、雰囲気から自分をいい男・女に仕立て上げるのが格別に上手かった。

当時まだ駆け出しで、芸に対して自信がなかった私は、自分に自信をつけたいと思っていました。

自信をつけるにはどうしたらいいか?

それは「モテる」こと。モテれば人気者になれて自信がつく!単純明快な私は、そう思ったのだ。

じゃあどうやってモテたらいいの?整形?ダイエット?食事制限?どれも手間暇お金がかかる!!!もっと簡単に!根本から!そして、マインドからモテるものはないのかぁあああ!!!?

そこで私が目をつけたのは「嗅覚」

お母さんの肉じゃがの香り、夏の日のアスファルトの焼けつく匂い、梅雨の雨の香り。全てにドラマが詰まって、話題になってモテててるではないか!

大学時代、ヒロの思い出をなすりつけられたトラウマから匂いに対して抵抗があり、先延ばしになっていた香水探しをこの機会にと!本腰入れてやってみた。

恋の媚薬入り香水を見つける

そんな時、大好きだったあるモデルさんのブログで、「恋の媚薬入り香水」の記事を発見。

「媚薬香水ってなんだよっ」と、最初苦笑してしまったが、「匂いを嗅いだ相手がエッチな気分になってしまい自分に恋する!」と書いてあるではありませんか!

そんなこと起きたら、夜のサーカス始まっちゃうよ!と思いつつ、モテたい一心で気がつけばポチッとしてました。

届いた商品はすりガラス状の小瓶に入ってシルバーの蓋。

ガラスの上に小さくディープスイートラブと書かれ、玄関先に置いておいても可愛いアンティーク小瓶に紛れて違和感は全くありません。

香水のジャッジ基準は、自分が興奮するかどうかです。自分が興奮しないのならば、相手が興奮するなんてありえません。

蓋を開いて手首にワンプッシュ。

目の前に、形の良いおっぱい、キュッあがったお尻、柔らかく肌触りのよいセクシーだけど質のいいシミーズを着たお姉さんが私を誘います。

おそらく私が男だったら間違いなく、全財産投げ打ってもその人とやらしいことをしたい!と思いました。そうです、私はこの香水に欲情したのです。

えっちな事を考える人は、少しアンニュイな雰囲気女になれるもの。

相手を誘惑させるフェロモンを放つこの香水に、自分が誘惑されてしまい、ミイラ取りがミイラになる、改めて「モテたい奴が自ら発情した」となんとも情けないオチになってしまいましたが

とにかく私は、この香水には魅力されてしまい、香水をつける事で「擬似いい女」を楽しみ始めたのです。

舞台の上では、自分をいい女だと思い込ませる。この精神はパフォーマーにとって、何より大切な感情だと思います。

こうして、舞台の上の数分間の間「私はいい女」になれる「魔法の引き金」を手に入れたのです。

モテたい方は、ぜひ自らを暗黒の香しき世界へ誘ってみてください。自分自身に自分がメロメロになります。

あとは、簡単!相手をメロメロにするだけ!

ぜひ、いつもと違う自分を心のブラックホールから発掘してみてください。


P.S 匂いは伝説の黒薔薇ブラックバカラローズの香り。かれこれ8年、私にいい女の夢を見せてくれています・・・。